学習中: 子宮頸がん予防( 朝日新聞出版) 2011年

高橋真理子 朝日新聞編集委員・科学医療グループ


同書の内容からの書き出しです。


・2010年度補正予算にて 1085億円が、Hibワクチン・小児用肺炎球菌ワクチン・子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)に助成金を出すことが決定された。

・2012年3月までの期間限定助成であることから、全国の大半の自治体がこのHPVワクチン接種を呼びかけた。

・子宮がんuterine cancer と 子宮頸がんcervical cancerは 別のものだが、それまでは一緒にして「子宮がん」と呼ばれてきた。

・子宮がんは閉経した50代、60代で発病するのが一般的。一方子宮頸がんは20代、30代で発病することも珍しくはない

☞ ことばのレトリック ?    データに基づいた客観的な数値を示さずに,煽情的表現を用いているとも言える。

・子宮頸がんは「ウイルス」が原因により起こるが、子宮がんの原因は不明

・予防が可能なのは、子宮頸がんの方だけ。

・日本全国で子宮頸がん予防ワクチン導入を求めるキャンペーンが展開された。次のように訴えかけた。「若い女性の子宮頸がんが日本で急増している。20代や30代でこの病気にかかると、本人や家族の苦しみ、悲しみは筆舌に尽くしがたい。命が助かったとして、こどもが産めない身体になることもある。そんな怖い子宮頸がんを防ぐ手段 - ワクチンが新たにできた。だがその接種費用の5万円は簡単に払える額ではない。だから、誰もがその恩恵を受けられるように公費を投じて欲しい。


・ワクチンは病気を予防する手段で、英国のジェンナーが200年以上まえに種痘を発明して以来、さまざまなワクチンが開発されてきた。このおかげで人類は天然痘ウイルスを撲滅することができた。

・ワクチンは病気を防ぐうえで大きな威力を発揮したが、良い事ばかりではなかった。副作用がつきものであった。軽いものは、注射した場所が腫れる、痛むなどだが、まれに病原菌が身体に入ったのと同じ症状を起こしてしまうこともあった。

・種痘接種の場合も、種痘脳炎と呼ばれる重い脳炎が起こった歴史がある。日本では1950年代から社会問題化し、1970年に北海道小樽市では、生後6カ月で種痘接種を受けたあとに下半身麻痺と知能障害の後遺症が残り、24年間の訴訟をへて、原告勝訴。

・戦後間もないGHQ占領下の日本では、1948年、日本で予防接種法が施行されて、戦後間もない日本では子どもの死亡原因の上位にあったジフテリアに対する予防接種が行われた。このワクチンはジフテリア菌がつくる毒素をホルマリンで無毒化して作るのだが、製造工程で一部、ホルマリンを注入し忘れたか、あるいは量が少なかったために、毒素を完全に無毒化できないままのワクチンが使われた。この結果、京都で674人が発病、うち68人が死亡。538人に後遺症が残った。島根でも16人が死亡、合わせて84人の乳幼児が命を落とした。

・1976年、米国では陸軍で「豚インフルエンザウイルス」が検出されるという風邪が流行し、兵士1名が死亡した。


医学雑誌 new England Journal of medicine 2008 august 21号 に「慎重であるべき理由」と題された論文が掲載された

・有効性の判断基準は“前がん病変”をおさえるかどうかに置かれ、16型と18型のウイルスによってできる前がん病変を減らす点では大成功だった、しかし、未解決の問題がたくさん残った。

例えば

①前がん病変には有効だったが、最終的に子宮頸がん、そして死亡を予防するのか?     ②ワクチンの効果はどれくらいの期間 続くのか?                    ③HPV感染の多くは、本人の免疫系によって簡単に排除されるが、HPVに対する自然免疫にワクチンはどんな影響を及ぼすのか?                          ④思春期前の女の子には面会苦応答の試験のみが実施されたが、ワクチンはこの年代の女の子にどんな影響を及ぼすのだろうか?                          ⑤子宮頸がん検診に対してワクチンはどんな影響を及ぼすだろうか?           ワクチンは16型と18型のふたつのタイプのHPVしか防がないのだから、子宮頸がん検診はその後も受け続けなければならないが、ワクチンを打った女性は検診を受けようという気にならないかもしれない。                                                                                                                          ⑥16型と18型以外の高リスク型HPVにワクチンはどんな影響を及ぼすだろうか?   例えば、そのふたつを抑えることで、他のウイルスが優勢になることはないのか? 

これらの本質的な疑問に答えるには、大勢の女性を何十年にもわたって観察しなければ正確な答えは得られない。

子宮頸がんそのものを防ぐのに関与する重大な疑問の数々が解決されずに残っている。大規模なワクチン接種プログラムを勧奨する前に、長期にわたる臨床試験がもっと必要である。


将来、良い結果をもたらすかもしれないが、今のところは証拠は不十分で、効果があるのか、あるいは最悪の場合は、害をなすのか、長い年月を必要とする医学的介入に対し、どうやって理性的な選択を政策決定者はできるのか?  


費用対効果分析は、不確実な状況での決断をするときの道具ではあるが、それ自身が医学的介入の有効性の証拠となるものではない。費用対効果分析は、多くの要因を考慮に入れなければならず、様々な仮定をしなければならない。その仮定の数字が変われば、結論の数字も変わってくる。


これほどたくさんの本質的な疑問が解決されずに残っているのだから、大規模なワクチン接種プログラムの導入には慎重になつてしかるべきだ。 私達は証明されていない仮定に基づいて重大でお金のかかる決断をするより、研究を通じてもっと確実な答えを見つけることに集中すべきだ。


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