学習中:子宮頸がんワクチン事件 斉藤貴男著 集英社インターナショナル刊 2015年
「10万個の子宮」と同時並行で学習中
本文より気になった部分を書きだしています。
・日本ウイルス学会理事長発言「.....ワクチンは非常に多くの方が接種するので、いわゆる紛れ込みの数も多くなる。当然、真の副反応というのも、あることはあるでしょう。実際には、それが真の副反応であるのか、紛れ込みとしての有害事象であるかは、(判別が)難しい」「部会では、同様の病態を呈する症例について、いくつかの可能性を挙げ、検討してまいりました。神経学的疾患-副反応としての可能性。 中毒の可能性。 免疫反応による症状である可能性。 心身の反応 - 局所の痛みや不安をきっかけとした症状と、痛みや緊張、恐怖、不安が身体症状として招致されるものという意味での心身の反応、機能性身体症状である可能性。」だが、同氏は、三つ目までの可能性をいずれも否定。四つ目の「心身の反応」の可能性をとるのが目下のポジションだと述べた。これだと他の三つとは違って、ワクチンの成分とは直接の関わりがないことになる。2014年1月に厚労省が打ち出した見解が、そのまま繰り返されていた。
・学者さんたちの構図を見ていると、患者さんに直接接している人たちは、なんとか守ってあげたいという思いが強いし、ワクチンを進めたい人たちは、そういうところに目をつぶりかげんにして、全体に効果があるんだからグダグタ言うなということで、なかなかかみ合わない。こういう問題はいつもそうですね」
・予防接種というのは、残念ながら時に被害に遭われる方も出るけれど、トータルでは明らかにプラスだという場合に、まあ仕方がないかということでやるもの」
・ただ、このワクチンの効果はある種、限定的なもので、そもそも子宮頸がんという病気は、ワクチン接種の他の病気とは少し性格が違う気がする。空気感染ではないのだから、全員に打たなくてはならないものなのか?」
・実際に重篤な副反応が出ている人がかなりおられる。ワクチン由来かどうかはまだ明らかではないけれど、接種した人に表れていることは確か。それを因果関係がわからないから (という理由で補償はしなくても)いいんだ、気のせいだなんていう言い方はないだろう」 「水俣病のときも、チッソはあの廃液を、因果関係はわからないんだからと言って、垂れ流し続けた」「厚労省はそういうのを抑えるのが仕事だというのに、あまりに無責任ではないか」
・親しかった友人たちが、忠告してくれながら、去っていくんです。「彼らはワクチン反対派だ、先生もお立場をわきまえて。発言力がある貴方が、こういうことを口にだしちゃいけません」と。
・実は僕も、小児科学会の会長だった当時はHPVワクチンを推進する側に名前を連ねていました。小児科医はみんなおとなしくて、新しいワクチンがでるたびに、国に認めてもらえるまで、5年越しになってしまうんです。でもHPVワクチンの場合は、産婦人科学会が中心で、彼らはそれまでワクチン導入なんて手掛けたことがなかったのに、「やるなあ」と思わされたのを覚えています。あれ、1年で認可が通ったでしょう。ずいぶんと国会でロビー活動をして、専門家の会議を立ちあげたりして「小児科(学会)も彼らを見習わなくては」なんて、みんなで言っていたのです」
・そもそも百万人に数例の症状が表れた方々は、特に感受性が高いということなのか? だとすれば、それは遺伝子によるものなのか? 環境なのか? 厚労省がいうような心理的なものなのかは別にして、そういう可能性を追っていく必要性は科学としてあるかな、と(考えます)」
(筆者の質問)体質の問題ということになりますか? ゜「それを言うと、厚労省のコメントと同じで、本人だけが悪いのかと逆なでしてしまう危険がある。もちろんそれだけが原因ではないと思いたいし、遺伝子以外の因子が影響している場合は、DNAをとってみてもわからないかもしれない。でもワクチン自体が問題なのであれば、副作用はもっと高頻度で起こっていいはず........。だから結局、要はどこまでを許容して、どこまでは許容しないかという、科学ではなく行政的な判断になります。そこには当然、文化とか政治もからんできますね」
・K氏が、2014年9月日本社会薬学会で「海外におけるHPVワクチン副反応被害報告と補償・訴訟の実態」と題する報告を行った。それによれば、
◇アメリカ「VEARSレポート」ワクチン接種後の有害事象は 2014年7月現在 3万5692件。死亡170件を含む。(以下省略) 2013年3月現在で約200人が提訴し、うち2人の死亡者を含む49人が米国ワクチン被害補償プログラムによって補償された。(以下省略)
・(各国における副反応報告は)必ずしもHPVワクチンとの因果関係が証明され、確定した事実ばかりではない。そのまま日本人の感覚で受けとめてはよくないと思われる。国によってワクチンの副反応に対する報告システムや補償制度が異なっているからだ。(アメリカの場合は)接種者の基金で運営される「全国ワクチン被害救済プログラム」が特徴だ。1回のワクチン接種について75セントを保護者らが支払って積み立て、副反応による健康被害がでた場合は、ここから救済金が拠出される仕組みである。
・各国政府が集団接種の中止あるいは中断に踏み切らないのはなぜなのか? それをまた市民もよしとしているのはなぜなのか? K氏に尋ねた。「個々のリスクよりも全体のメリットを優先しているということなのでしょう。市民の側にも追及する力が足りないか、あるいはそうした政府の考え方を追認している(のでしょう)」「何より重要なのは社会防衛で、個別の犠牲は金銭で解決するのが欧米流の民主主義であるらしい」
・ワクチンの世界には「VPD」という思想潮流がある。 Vaccine Preventable Disease ワクチンで予防できる病気という意味で、ワクチン接種をより多くの疾病領域に広げようとする運動も展開されている。
・ワクチンには個人が感染症に罹患するのを予防する個人防衛の意義だけでなく、感染症の流行を防止する社会防衛の側面もあるので、当然、そこには公衆衛生上の必要性も検討されなければならない。
・アメリカのワクチン傷害補償制度は、保健省と連邦請求裁判所と司法省の三者が共同で運営しています。これはいわゆる無過失補償です。公衆衛生上の必要性から接種を進めている以上、何かあった場合に国が責任を持たないと、誰もワクチンを受けてくれなくなりかねないということで、1980年代に整備されたインフラです。無過失補償というのは、因果関係が証明されていなくても(補償される)ということです。(因果関係の)証明は非常に難しい。時間も経済的な負担も相当にかかる。だけど治療が必要だという場合のために設けられた制度です。(ただしこれを受けるには)条件があり、補償を受けたら民事訴訟を起こすことはできません。アメリカはそういう社会ですから、不服ならお金の受取を拒否して、民事訴訟で要求する。
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)による国の救済制度の適用を認定されたケースは10件だけだった。(救済制度の適応を受けるには)きわめて
ハードルの高い仕組みになのである。また適用されたとても、被害者側に支払われる金額は医療費(自己負担分)や障害年金、死亡した場合の葬祭料および一時金程度でしかない。
・副反応検討部会のデータによると、販売開始から今年(2014年)の3月末までに79万人がガーダシルを接種てしいます。そのうち、いわゆる重篤な症状が出たといわれる副反応報告が全部で617件。 全体の0.035%から0.006%の割合です。それから例の不随意運動とか、厚労省のいう広範な疼痛、運動障害のある障害が、両製品合計で 176名です。 10万接種あたり2件ぐらいの割合。 日本では毎年1万人、この病気にかかる人がいて、3000人以上が亡くなっていることを考えると、客観的というか、科学的に見て、ベネフィットがリスクを大きく上回るという結論が出ると思うのです。
・こういう言い方はしたくないのですが、亡くなるのは主にお年寄りです。一方でワクチンを打つのは中学生や高校生ですから、それでガンにならない人が増えたとしても、人生を台無しにされてしまうかもしれない子たち一人ひとりを考えると、(1万人とか、3000人という)人数の問題ではないように思うのです。
・確かに、亡くなる方々の多くは20代、30代ではありません。とはいえ発症するまでが長い病気だし、その予防は最初の性交渉の前にしておかないと効果がない。若いときにしかチャンスがないのです。
・(製薬メーカー責任者の話)私はお医者さんにクスリを勧められても、ときどき拒否したりします。効かないと思うから嫌ですと (断ります)。 何でも最終的には個人の判断たと思うのです。
・このワクチンが日本の少女たちに打ち込まれていった過程において、官僚も、政治家も、医師や研究者たちも、ほとんど当事者能力を持ち合わせていなかったようである。これに比べたら、まだしもMMRワクチンのときには、導入のかなり以前からその有効性や安全性に警鐘を鳴らす論文が数多く書かれ、いざ副反応が社会問題化した際には、遡って検証することも難しくなかった。HPVワクチンは違う。日本独自の研究も皆無に近かった。あたかも天の声に誘われるでもしたように、この国の社会システムに組み込まれ、たちまち浸透した。それで救われる命もたくさんあったに違いない反面で、少なからぬ少女が将来を悲観させられる結果が招かれた。
・アメリカの有力なシンクタンク「CSIS」が2014年5月に「日本におけるHPVワクチン接種状況-問題と選択肢」と題するレポートを公表。前年2013年6月に接種の積極的勧奨が中断されて以来の膠着状態を嘆いてみら、彼らの意向に異を唱える者を個人名をあげて断罪し、強権的にでも再開すべしとのメッセージを日本政府に突きつける内容になっていた。
・日本にはメディアを監視する機関がなく、名誉棄損に関する法律が比較的緩い。これはつまり、新聞、テレビのニュース番組、ソーシャルネットワーク、そして被害者支援団体が、HPVワクチン接種後に有害事象に苦しんでいると主張する女児に関する、信ぴょう性を確認できない話や動画を公開できることを意味する。 要するに、HPVワクチン接種を推奨することを中止した日本の対応は、主にワクチンに反対する団体から称賛され、その一方で世界の科学界を困惑させていると言える。ワクチンに反対する感情は主要なメディアでは広く取り上げられていないが、先に述べたようなソーシャルネットワーク経由で拡散し、反対の感情が強まる結果となっている。